石の家 37話:優しい悪魔.2(学園祭編・その4)
2004/03/02 Written by ノア

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ユウナ「ア、アニキさん、凄い・・・全然怖くないの?」
アニキ「あ、あ、あ、あったりまえだぁ〜〜い」←薄く甲高い声

畜生、見てろよぉ〜・・・そう言いながら、
今度は青いボタンを押した。
アニキにとりつけられた発信機は一方通行ではなかったのである。

これはシド学園長がビサイド・ガーデンで
新しく作った試作品の一つだった。
SeeDを作るわけではないが、
一応魔法や実践もいずれ教えていく。
年少の子供のために、バーチャルでまずは覚えさせようと、
この装置を作ったのである。

すなわち。
これを【装着した者】にだけ幻影を投影することができるのである。
まずは小手調べにと、アニキの目の前には突如、
双頭ゾンビのインとヤンが現れた。
さぁ、恐怖の声をあげるがいい・・・
そう2人がほくそ笑んでいるとき、
期待以上の叫び声が聞こえてきた。

きゃあああぁぁぁああ!!!

ウェッジ「お、おい、今の声って・・・ユウナちゃんじゃ・・・」
ビッグス「あ、あれ?おかしいな、なんでだ!?」

モニターでも確認して2人は慌ててしまった。
画面には・・・白目をむいているアニキが映っていた。
倒れたくても倒れないのは、
その腕に恐怖で怯えきったユウナがしがみついていたからだ。
その可愛らしい口からは、聞いているほうも
胸が締め付けられるような悲鳴が飛び出ている。

ウェッジ「クソ、あの馬鹿学園長、失敗作じゃないか!」
ビッグス「えっ・・・ちょっと待った・・・・・・オレが間違えたのかも・・・」
ウェッジ「うぇっ!!!」

使い慣れない機械を突然使おうとしたからか。
青いボタンには【実体化】の文字が書いてあった。
・・・ということは・・・今、ユウナ達の目の前にいるのは・・・

ウェッジ「どどどどどどどどうするんだよぉ・・・・・・」
ビッグス「ほほほほほほほほ本物出しちまった・・・」

2人に追い討ちをかけるように、
モニタールームには、ユウナの更なる凄まじい絶叫が
これでもかと響き渡っていた。
俺たち、この年で人を殺めてしまうのか・・・
それならいっそ、ユウナちゃんを守って・・・
アタフタしているとき、ユウナの絶叫がやんだ。
遅かったのかとモニターを見ると、
ユウナはまだ生きていた。
絶叫が止まった変わりに、その目が恐怖で見開いていた。

その視線の先にあるものをカメラをパンさせて映し出したとき、
今度はウェッジとビッグスがひっくりかえる番だった。

巨大なミイラがそこに立っていたからだ。
包帯から覗く黄色い目が妖しく光っている。
気のせいかインとヤンも恐怖に打ち震えているようだ。
お互いが違う方向に逃げようとして、
ミイラの前でバタバタともがいていた。
何もしないうちにそのミイラは倒れたと思いきや、
地面がグルリとひっくり返り、
身の毛もよだつような骸骨が現れた・・・!
手にしていた鎖を引きちぎるや否や、
インとヤンに向かって情け容赦ない百烈拳をぶちかましている。
黒い球体に包まれたと思った瞬間、
激しい大爆音とともにインとヤンは吹っ飛んでいった。
画面には「カオスティック・D」と映し出されていたが、
泡吹いて失神しているウェッジとビッグスには
拝むことが出来なかった・・・。

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