石の家 18話:ボディガード.1(遠足編・その3)
直前の画面に戻る2004/01/28 Written by サエ

1 / 2 / 3 次のページ ►

眠らない街、ザナルカンド。
それは喧騒と熱狂に満ち溢れた巨大な歓楽街。
優勝決定戦を終え、街はいつも以上に熱気に包まれていた。
そんな様子を
遙かなる高みから眺める二つの人影があった。
そこは、ブリッツスタジアムを一望できる高台の上。
・・・某アーロンが某シンを出迎えた場所、とも言う・・・
人々が歌い踊り、喜ぶ様をただ静かに観察している二人の背後に
美しい影が忍び寄る、

イデア「やはり、ここにおられましたか。」

振り返った一人は
ボンっキュっボンっと不二子ちゃんも真っ青の
ビーナスラインの持ち主であった。
凍てつくような美貌ではあるがイデアを見ると
その瞳は優しい色を浮かべる。

シヴァ「まあイデア様、わざわざ申し訳ございません。」
「本来なら私から出向かねばならないものを・・・」
イデア「とんでもない、それより様子はどうですか・・・」
シヴァ「私だけでは、やはり手に負えないようです。」
「これだけの試合を見ても彼女には何の影響も与えられませんでした。」

シヴァは自分の足元にうずくまっている少女の髪を
優しく撫でてやる。
が・・・・・・それにすら、少女は反応を示さない。
一体何者なのであろう、その姿は
人間としての原型をほとんど留めていないのだ。
白紫に身体全体が発光しているため、人型を朧気に残しているだけで
その眼はただカッと見開いたまま何を見つめるでもなく、
自分の内なるエネルギーを無制御に放出していた・・・。

シヴァ「可哀相な子なのです。」
イデア「その事なのですが。ようやく、私の学園も整ってまいりました。」
「今こそ、私に任せてみませんか?」
シヴァ「まぁ・・・!?そんなことが可能なのでしょうか・・・!?」
イデア「私に不可能なことなどあるでしょうか?」

嫣然とイデアに微笑みかけられると
同性のシヴァでさえ、
職種を忘れて燃え上がらんばかりに体中が火照っていく。

シヴァ「でもこの子ではイデア様の手に余るのでは・・・」
イデア「そんなことはありません。皆、私の可愛い子供達ですから。」

イデアがその少女に触れると・・・初めて変化が現われた。
少女はゆっくり後ろを振り返り、
やがて朧気だった人型が徐々に本来の姿を取り戻していく。
緑の髪をポニーテールにした可愛い少女へと・・・。

ティナ「あなたは・・・誰?」
イデア「私はイデア。ティナ、貴女の夢は何?」
ティナ「わたし・・・わたしは・・・愛が知りたい・・・」
イデア「それならば私と一緒にいらっしゃい。」
「貴女と同じように学んでいる子供達が沢山いますよ。」
ティナ「・・・・・・いや・・・」
「シヴァがいないと、嫌!」

幻獣と人間とのハーフというその特異な境遇により
ティナは辛い幼少期を過ごしていた。
父親の幻獣はあっさり狩られ
人間を辞めたい母親はこれまたあっさり自ら命を絶ってしまった。
孤児となり一人残されたティナを
ここザナルカンドへ連れてきてゆっくり見守ってきたのがシヴァだ。
ティナにとり、そんなシヴァはかけがいのない唯一無二の存在であった。
今、自分がティナから慕われているこの喜びを
ティナ自身にも味あわせてあげたい・・・
だが、シヴァ一人きりでは限度がある。
それには学園生活は不可欠であろう。

シヴァ「イデア様、どうしましょう・・・」
イデア「私からもお願いしますわ。」
「是非、貴女も我が学園にいらしてください。」

1 / 2 / 3 次のページ ►  ページトップ▲

inserted by FC2 system