石の家 21話:神様ヘルプ!.2
2004/02/02 Written by ノア

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30分くらいすると、今度は一人だけが
天井から覗き込んできた。

ゾーン「また壁が開くから食器を戻すでごじゃる。」
「中に入ったりしないように、見てるでごじゃる!」

こっそりシューターの中に紛れ込んで、
なんとか脱走出来ないかとゼルが考えていたのだが、
すっかり読まれていたようであった。

バラライ「ねぇねぇ、キーボードが欲しいよぉ。」
ゾーン「なに???」
バラライ「楽器だよぉ〜。それで皆で歌うんだ。」
ゾーン「・・・待ってるでごじゃる・・・。」

食器を全部シューターに押し込んだのを見届けると、
その隣の小ぶりの口が開き、中に小さなピアニカが乗っていた。
背面のところに「ソーン」と名前が書いてある・・・。

ソーン「壊したら許さないでおじゃるよ!」
ゾーン「もうすぐ上陸でごじゃる。用意するでごじゃる。」

双子はまたバタバタと戻って行った。
気のせいか船のスピードも緩んだようだった。

風神「楽器・・・??何故・・・???」
ゼル「オ、オレ・・・歌なんて歌えねぇぜ・・・(モジモジ)」
バラライ「僕ね・・・ちょっとした友達がいるんだ・・・」

そういってバラライは、器用にピアニカを弾きだした。
それは聞いたこともない、なんとも哀愁漂う音楽だった。
話しかけるような、語りかけるような、
そんな音楽だった。

そしてしばらくすると・・・
上の方から、双子が大騒ぎしてる声が聞こえてきた。

ゾーン「前に進まないでごじゃる!!(じたばた)」
ソーン「後に戻ってるでおじゃる!!(どたばた)」
ゾーン「やややっ、この影はなんでごじゃるか?」

双子が見つめるソナーには、
自分たちの船の3倍はありそうな巨大な影がうつっていた。
そして信じられないスピードで、
今来た道のりをそのまま後戻りし始めたのである。

そこで二人はしばらく、
お前が潜って来い、いやお前が調べに行け、と
パタパタと猫パンチで応酬をはじめた。
そんなことをしているうちに、
船がパッタリ停まった事に気がついた。
海の真っ只中である。
浅瀬でもない。
座礁したわけでもないようだった。

とりあえず甲板に出て海の様子を見ようと
双子が覗き込むと・・・。

そこには見たこともない巨大生物が居た。
クジラが猫にすら思える巨大さだ。
よく見るとそれは生物ではなく機械だった。
それにしてもこんな巨大機械、見たことがない。
もっとよく見ようと身を乗り出したとき・・・ 恐ろしげな手が海面に現れた。
鋭利なその爪を見ただけでも、 二人のピエロはオチッコちびりそうであった。
指はゆうに二人分の胴回りほどもある太さだ。
その指が・・・二人へ向かってきた・・・。

ソーン「ひぃぃぃぃいいいぃ」
ゾーン「ひぃぃぃぃいいいぃぃ」

しかしその手は、二人を飛び越し・・・
そのまま、子供たちがいたコンテナの中へと吸い込まれていった。
ゆっくりと戻されたその手のひらには・・・
大喜びしているユウナレスカと、
失神しそうになっているゼルと、
どさくさに紛れてシェリンダを殴ってる風神と、
殴られて大泣きしてるシェリンダと、
ピアニカを持ってニコニコしてるバラライが居た。

バラライ「これ、貰っていくね〜〜!」

そういってまた、ピアニカを吹きだした。
その旋律に合わせるかのように、
怖ろしいその怪物も動き出した。

ソーン「ピアニカを渡したゾーンのせいでおじゃる!」
ゾーン「ピアニカ持ってたソーンのせいでごじゃる!」

しかし二人には猫パンチでじゃれてる暇はもうなかった。
バラライの一吹きで・・・
タンカーほどの大きさの鋼鉄の巨大尻尾が、
二人の船を襲ったのである。
無論・・・ただの一撃で船は木っ端微塵。

ソーン「おたすけ〜〜〜〜〜〜っ!」
ゾーン「たすけれ〜〜〜〜〜〜っ!」

一方、子供たちが乗ってる手のひらは、
海に浸からないように充分な高さに保たれたまま、
その機械・・・ヴェグナガンが、
ビサイドへと一路泳ぎ進んでくれた。
見慣れたビサイドの砂浜はすぐ見えてきた。
長いリーチを生かしてそのまま砂浜へ、
子供たちを降ろしてくれた。
ヴェグナガンは尻尾だけ海面に出して、
ピコピコと振って挨拶してから、
また沖のほうへと消えていった。

ゼル「す、すげぇ・・・なんだったんだあれ・・・」
バラライ「偶然見つけたんだけど、古代遺跡の一種みたいなんだぁ。」
ユウナレスカ「おっきぃねぇ〜、又会えるかなぁ。」
シェリンダ「あんな機械、スピラの教えに反してるわ!」
「すぐに壊さなくちゃダメよ!」
ゼル「おめぇなぁ、アイツのお陰でオレたちは助かったんだぞ!」
風神「他言無用!他言厳禁!」
「本気真剣・・・他言行為・殺・・・・・・」

風神だけでなく、他の子供にも睨まれ、
シェリンダ一人、納得のいかない顔をしていた。
美しい水平線・・・
もうヴェグナガンは見えないが・・・
この海の彼方で、
ソーンとゾーンはどうなったことであろうか。
あとは神のみぞ知る・・・アーメン。

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