FF4 バロン編 .2
Written by サエ

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(ついに・・・私は帰ってきたのだ・・・!)
(懐かしの故郷・・・バロンの香り・・・ん?香り???)

「・・・・・・なんだ、この匂いは・・・・・・!?」

ワープ装置のある部屋から慌しく外へ出るとそこには・・・・・・

牛・馬・豚・・・ありとあらゆる家畜が
町中を自由に闊歩しているなんとものどかな風景が飛び込んできた。
そう、至る所で、家畜市場と同じ匂いが充満しているではないか!?

「ポポポ、ポロム!これは、一体・・・!?」
「バロン国家は今では有数の農業国家になっているのですわ。」

早速自分の役が回ってきて、嬉しそうに解説し始めるポロム。
暗黒騎士としてのイメージが強かったバロン国家は、
それを払拭しようとセシルが農業政策を推進した結果、
世界の台所と異名を取るまでの、ありとあらゆる食材を手に入れられる
一大農業王国として発展したのであった。

バロン城右にあったワールドマップの草原はいまや
大量の『畑』マークで埋め尽くされていた。

街中を見回すと、槍や剣を持つ人は皆無であった。
武器を鍬に変え、首にタオルを巻いて歩くその姿はまるでカールおじさんである。
バロン城にも、既に昔の面影は全くない。
養鶏場や養豚場、ありとあらゆる家畜で溢れかえり、
とても王宮がある場所とは思えなかった。

そこへ・・・

『カイン・・・!!カインではありませんかっ・・・!』

鈴の音が転がるような優しいこの声は・・・、
カインはいきなり後ろから声を掛けられ金縛り状態となってしまった。

「カイン・・・!お帰りなさい!!」

ローザがゆっくりと自分に歩み寄ってくる気配がする。
全てを断ち切り、自分の想いにも終止符を打って山を降りたはずなのに
カインの心臓は早鐘を撞くように高鳴り始めてしまった。
隣でポロムが心配そうに自分を覗き込んでいるのに気付き、
安心させるように笑って見せ(実際は口の端がキュっと歪んだだけなのだが)、
思い切ってローザの方を振り返ったのであった。

「・・・・・・。ただいま、ローザ。」

カインの心臓は、今やまったくの平静を取り戻していた。
それと同時に、自分に対しての失望で自己嫌悪に陥ってしまった。

(オレは・・・また、修行をやり直さなくてはならないのだろうか?)
(オレのローザに対する想いは何だったのだ・・・・・・)

いやカイン、それは君だけのせいではないと思うぞ。

12年もの年月は、ローザをすっかり幸せ太りさせてしまったのだ。
ローザ王妃はまるでブラネ女王よろしく、すっかり横に広がってしまった。
農業王国となったのが災いしたのか、美味しいものを食べ、平和に過ごしてきた結果、
すっかり緊張感のない身体に変貌してしまったのだ。
昔の美しいローザの面影は、
その美しい目と優しい声にしか残っていなかった。
いや彼女の気のいいところも当然残っているのだが・・・

「今更なんだが、お祝いの言葉を言わせて欲しい。」
「結婚おめでとう、ローザ・・・!」
「ありがとう、カイン!」
「ところでセシルは・・・?(・・・セシルも肥えたのかなぁ・・・)」
「あの人は今、ゴルベーザ兄さんに会いに行っていて留守なの。」

世話係をかってでたポロムがこっそり耳打ちする。

「魔導船には、黄水晶がありましたでしょ?」
「だから月がどれだけ遠くに行こうと、あの船に乗ればいつでも会いに行けるんですのよ。」

ローザも安心しきっているようだ。
兄ゴルベーザとセシルは今までの分を取り戻すかのように
頻繁に連絡をとってはお互いの星を行き来しているらしい。

「あと1年経てば戻ってくると思うわ。」
「・・・そうなのか・・・世の中、変わったなぁ・・・」
「そうよ!他の場所もすっかり変わってるんですから!」
「ねぇローザ、カイン様を他の場所に案内してあげてもいいかしら?」
「ええ、勿論!カイン、貴方の帰ってくる場所はここなんですからね。」
「偉大なる竜騎士様として、いつでもポストは空けてあるのよ。」
「ありがとう、ローザ・・・(ほろり)」
「なんてたって今や、バロン国家では竜騎士が一番重要なポストですし。」
「・・・?そうなのか・・・?その割りに全く見かけなかったが・・・」

ローザが時計をみやり教えてくれた。

「ちょうど今、皆外の畑に出かけているんです。」
「あの竜騎士のジャンプで、隅々まで農薬を撒く事ができますからね。」
「・・・・・・あ、ポロム殿、それでは他の国も案内してもらえるかな?」
「(クスクス)ええ!ではローザ、またね!」
「お帰りお待ちしておりますわ。」

今度は逆にカインがポロムを引きずるように、慌ててバロン国を後にしたのだった。

「・・・まさか竜騎士がジャンプ技を農薬散布に役立てる日がこようとは・・・」
「フフフ・・・世の中が平和になった証拠ですわ。」
「久しぶりにあったローザ様のご感想は・・・?」
「うむ・・・まあ、幸せそうで何よりだ!(きっぱり)」
「それより、ヤン殿はどうされたのであろうか?」 ←話題をそらしている
「ヤン様は、あの後すぐファブールの新国王になられましたの。」
「おお・・・!して、やはり、その・・・」
「・・・ふくよかになっているのであろうか・・・」
「それは見てのお楽しみ!」
「では早速ファブールへ向かいましょう!」

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