石の家 9話:はじめの一歩
直前の画面に戻る2004/01/14 Written by サエ

うぉおおおぉーーー!!

大興奮の雄叫びをあげながらビサイドの林道を駆け抜けていくのはゼル。
皆が「誰が一番高い所から飛び降りれるか」競争を繰り広げている滝の所まで
奇声を挙げたまま駆け込んできた。

スコール「なんだよ、うるさいな・・・」
ゼル「たっ、大変なんだ、海岸に凄いモノがっ!!」
ヌージ「だから、何を見たんだよ。」
ゼル「獣だ!見たことない獣なんだ!!」
雷神「デカイんだもん?」
ゼル「デカイデカイ!!身の丈・・・えーと・・・5mぐらい!?」
「しかも、二足歩行なんだ!!」
アーロン「それって獣じゃないんじゃないか・・・?」
ゼル「でも、尻尾ついてたんだ!!」
ジタン「おいおい、俺だって尻尾ぐらいあるぜ?」
全員「!!(そ、そういや、そうだった・・・)」
スコール「お、お前・・・何者なんだ?」
ジタン「ん〜?いやぁ、そう聞かれると・・・」
「俺、この星の生まれじゃないことは確かなんだけどな。」
アービン「もしかしてジタンの親なのかも!?」
サイファー「よっし、生け捕りだっ!!」

皆が突っ込むより先にサイファーは海岸へと駆け出して行く。
他の子供達も慌てて付いていった。
海岸には、丁度キーリカからの連絡船が到着したところであった。
その中に・・・・・・
確かに見たことのない獣がいた!!

しかし「獣」とは、いささかゼルが大袈裟だったようだ。
その正体は二足歩行が可能な獣人であり、
着衣らしきものも一応身に着け、大事な部分は隠している。
とは言え、尻尾とその頭から突き出た折れた角が
異様な雰囲気を漂わせていた。
子供達はその姿に恐れをなして、崖上の森の中からこっそり様子を窺っていた。

サイファー「なんだよ、5mもないじゃないか・・・」
雷神「それでもオイラ達の倍以上、デカイんだもんよ・・・」
ゼル「あんなの、捕まえられるのかなぁ?」
シンラ「あれ、獣じゃないし。ロンゾ族だし。」
ジタン「あれが、俺の親なのか?俺、ロンゾ族なのか??」
アービン「似てないねぇ〜」
ヌージ「大きくなったら、お前も毛むくじゃらになったりしてな。」
ジタン「やめてくれよぉ〜〜〜!・・・おっ?」
ギップル「・・・・・・」
シーモア「・・・・・・・・・(ドキドキ)」

子供達は、見たことのない獣人を興味津々に見つめる者と
その獣人に護られていた、可憐な少女にうっとりする者とに二分された。

ジタン「おお〜、この島にきてようやく美少女を発見!!」
ギップル「いい感じじゃ、ねぇっかよぉ〜〜!」
シーモア「ぼ、僕、結構タイプかも・・・(ポッ)」
ジタン「よ〜し、誰が最初にあの娘の名前を聞きだすか競争だ!」

女の子にかけては人一倍好奇心旺盛なジタンは崖上から飛び降りると
果敢にも少女に向かって一直線に走っていった!!
他の子供達はさすがに巨大な獣人が恐ろしく
誰もが足がすくんだ状態だったので
ジタンの無謀な挑戦を固唾を呑んで見守っていた。

「よぉ〜っ、俺、ジタンって言うんだ!」
「君どこから来たの!?」
「って俺は、自分が何処から来たのか知らないんだけどさ、ははは!」
「君には運命を感じるねぇ、きっと僕達は赤い糸で結ばれてるんだよ!!」
「その麗しの僕の女神様の名前はなんていうのかなぁ?」

ジタンは矢継ぎ早にユウナに話しかけていた。
無論、キマリがそんなことを許すわけもなく、
ウルサイ蝿を払うがごとくその豪腕を唸らせながら
ジタンを何度も追い払っていた。
しかしジタンはキマリの攻撃を巧妙にかい潜りながら
懸命に語りかけていた。
その足元へ・・・・・・


パララララッ、パラララララララッ・・・・・・!!


乾いたマシンガンの音が海岸に響き渡り、
砂浜から砂を舞い上がらせた。
ジタンも足を撃ち抜かれそうになってさすがに腰を抜かし、
その場にペタンと座り込む。
振り返ると、マシンガンを腰溜めして構えるツォン先生の姿があった。

「私の可愛い生徒に手出しはさせませんよ(キリ」
「ユウナ。この人、担任のツォン先生。」
「はい!先生、これからよろしくお願いします。」

ユウナが可憐にエボン式のお辞儀をすると
律儀にも腰を抜かしたジタンの方にも向き直り、同じくお辞儀してくれた。

「ユウナ、って言うんだね。」
「はい。光の家に転入してきました新人です。」
「俺、ジタン!よろしくなっ!!」
「・・・短い生涯を、今、この場で終えるか?」

ツォン先生に再び銃口を向けられ、慌てて立ち上がったジタンは
ユウナに手と尻尾を振り千切れんばかりに振りながら
皆の隠れている崖上へと戻ってきた。

ジタン「いや〜、死ぬかと思ったよ。」
サイファー「お、お前、勇気あるなぁ〜」
雷神「もう、気をモンダミンだもんよ・・・」
アービン「でもお陰で、あの娘の名前わかったね!」
スコール「やっぱり、あの先生は曲者だなぁ。」
シーモア「あの獣よりやっかいそうだねぇ。」
ギップル「あんな銃持ってるなんて、反則じゃねぇかよぉ。」
ヌージ「それに負けないぐらい、俺達が強くなればいいんじゃないか?」
アーロン「同感だ。敵を打ち破っての勝利こそが、男の美学!」
ゼル「だから、オッサン臭いって・・・」

ヌージがアーロンの代わりにゼルをどつき、
一同はまた滝へと戻ってきた。
ママ先生から、近々女子との共同授業があると聞かされていたのだ。
そのためには、もっともっと強くなっていなければならない!
でなければ、あのツォン先生を出し抜いて女子と仲良くなることなど
到底不可能であろう。
その日の滝修行はいつにも増して皆、がんばったという。

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