石の家 7話:Secret of My Heart
直前の画面に戻る2004/01/08 Written by サエ

その日は特別、寝苦しい熱帯夜であった。
男子はいつの間にか全員目が覚めてしまい気が付けば皆、
部屋の中央で車座になって集まっていた。
どうにも寝付けない。
こんな時は、アレだ、肝試しをするしかない!!

ルールは、遺跡の奥に安置されていたスフィアを取ってくることにした。
取ってきたスフィアをまた奥に戻しに行き、
次の者がまたそれを取りに行く・・・と、繰り返す事にした。
くじ引きの結果、バラライ君がトップバッターとなった。
皆に見送られながら一人寺院を抜け出し
満点の星空を眺めながら村を出ようとすると、入り口には
ビルーチャが立っていた。

「あれ、バラライ君。こんな夜更けにどこへ行くの?」
「あ、こんばんは!僕これから隠された遺跡に行くの。」
「んまぁ、一人で!?今から!?」
「そんな危険なこと、お姉さんさせられないわ!!」
「でも、これ肝試しなんだ。一人で奥にあるスフィアを取ってこなきゃ。」
「駄目よ駄目!」
「お姉さんが取ってきてあげるからバラライ君は洞窟前で待ってるのよ!」

天使の微笑を持つバラライ君、
既に年上女性のハートを射止めていたか。
こうして、バラライ君はなんら苦労することなく
スフィアを持ち帰ったのであった。

ギップル「うお!?思ってたより、早かったなぁ〜!」
サイファー「そうだ!!皆の帰還タイム、測ろうぜ!!」
ヌージ「なるほど、一番早く帰ってきた者が優勝だな。」
サイファー「・・・・・・だから、お前のタイムはなしな、測ってなかったし・・・えへへ」
バラライ「うん、構わないよ。」
シーモア「でも凄くいいタイムだったのに!」
雷神「オイラの腹時計が10分と告げてるんだもんよ。」
サイファー「(ば、ばか!!なんで言っちゃうんだよ!)」
シンラ「正確には10分25秒だし。」

シンラが腕時計を皆に見せ、結局これが基準タイムとなった。
次は雷神だ!
無事に遺跡奥までスフィアを置いてこれるのか・・・?
サイファーは心配そうに、
わざわざ村の入り口までついてきてくれた。

「大丈夫か、雷神。」
「ががが、がんばるんだもんよう・・・」
「お前、怖がりだからな。よしっ!」
「洞窟の手前に、こっそり置いてきてもいいぞ。」
「ええっ、そんなことしてもバレちゃうんだもんよ・・・」
「大丈夫!次、俺が回収にいくから、わかりゃしないって!」
「おお、なるほどなんだもんよ・・・!ありがとサイファー!!」
「怪しまれないように、適当に時間潰してこいよ〜」

こうして雷神は腹時計をたよりに、きっかり10分で戻ってきた。
雷神とバトンタッチしたサイファーは
寺院を出た途端に猛ダッシュし、なんと3分で帰ってきた!!

スコール「!?随分、早いな・・・!!」
アーロン「ふん、口先だけではないようだな。」
サイファー「これをまた、奥まで持っていくんだぞ!」

意地悪そうにサイファーは、持ち帰ったスフィアをシーモア君に手渡した。
次はシーモア君の出番だ!!
ビサイドで、一体どれだけ逞しく成長したか見せてもらおう・・・
ところがシーモア君は、時計が40分を過ぎても
いっこうに戻ってはこなかったのである。

サイファー「おっせぇ〜なぁ、アイツ!」
ヌージ「もう、寝るか。」
スコール「駄目だ!なんかあったんじゃないか・・・」
ジタン「じゃ、俺が様子みてくるよ!」
アーロン「ほおって置けよ。」
ジタン「誰かを助けるのに、理由なんているかい?」

ジタンはその場で器用に宙返りして立ち上がると、
軽快に駆け出していった。
アービンも、心配だからと言い残しジタンの後を追っていく。

サイファー「なぁなぁ、あいつら、二人で行ったから失格な!」
ゼル「せこいぞ、サイファー・・・」
サイファー「うるさいうるさいうるさいやいっ!!」

さて。
シーモア君が一体何をしていたのかと言うと。

実はビサイドの海岸で陶然と立ち尽くしていたのだ。
肝心のスフィアはおっかなびっくりしながらも、
ちゃんと元の場所に戻してきたのだ。
ところが遺跡から出た時――
イデアが海岸へ向かう姿を見かけてしまったのである。
思わずそのまま、ママンの後を追いかけてしまったのだ。
イデアは海岸へつくと、
光り輝く月明かりを水面に美しく照らし返す海の中へ
一糸纏わぬ姿となり水浴びをはじめたのであった。
シーモア君はもう、肝試しのことなどすっかり忘れて
ただただ、その姿に魅入っていたのである。

そこへ、シーモア君の匂いを辿ってきたジタンとアービンがやってきた。
シーモア君が呆然と眺めている方角を見た二人は
イデアが水浴びする姿をみて同じく金縛り状態に陥る。
しばし、桃源郷の時間を堪能する3人・・・。
イデアはようやく海から上がると、静かに寺院へと戻っていった。
3人も呪縛から解き放たれ、
自分達が肝試ししていたことをやっと思い出した。

時間にして、一体どれだけ経っていたのであろうか。
寮に戻った時、皆はもう待ちくたびれて既に寝息を立てていた。
サイファーの枕元には、
「俺様が優勝!!」というのぼりが立てられていたが
イデアの眩しい姿を見た3人はその夜、
誰よりも素晴らしい夢を見ることが出来たのであった。

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