石の家 6話:未知との遭遇
直前の画面に戻る2004/01/08 Written by ノア

おお・・・今日のビサイドはいつもよりも晴天だ。
抜けるように青い空、エメラルドの海、まさにパラダイス!!

そんな景色など全く気にかけるでもなく、
一人の少年が、一生懸命打ち込みをしていた。
その手に持つは名刀・正宗・・・ではなく、ただの木の棒であった。
浜辺に流れ着いていた木片を拾い、
アーロンは一心不乱に打ち込みをしていたのである。

「491・・・、492・・・、49・・・3・・・・・・」

アーロンは・・・今まで体を動かすことにかけては、
誰にも負けたことがなかった。
さすがにこの学園に来てからは常に1番ということはなかったが、
それでも上位常連軍だった。

それが・・・初めて、「全く出来ないもの」に遭遇してしまった。
子供たちの間で大人気のガンシューティング・・・
アーロンは、的に一発も当てることが出来なかったのである。
自分ではキチンと狙っているつもりなのに、
どういう訳かその弾はいつも雷神に当たるのであった。
誰よりもでかい図体の雷神を責めるべきなのか?
否。
なぜならいついかなるときも、百発百中の名手がいたからである。

よりによって・・・アービンだなんて・・・(ブツブツ)

当たり弱いアービンはいつも泣いていた。
そのアービンが、ガンシューティングではいつもパーフェクトだった。

銃なんて・・・柄じゃないんだ・・・・・・
そうだ、自分も・・・誰にも負けない何かを持てばいいんだ。
アービンが銃なら同じである必要はない。
自分は、違うもので、一番になってやる!

そんな決意の中で、目に留まったのが海からの漂流物だった。

これだ・・・この感覚・・・・・・
すごい大技をいつかこれで編み出してやる!!

そう思った瞬間、体が勝手に打ち込みを始めたのであった。

「501、502、503、504・・・・・・」

少し、ピッチが速くなったようだ。
そうは言ってもまだ子供、打ち込みをしてるといっても、
無我の境地にあるわけではない。

大体・・・あのシーモアってのがうまかったのも
気に入らないんだ・・・

アーロンは元来、弱い者イジメは嫌いであった。
しかし、どうもあのシーモアだけはそりが合わなかった。
第一印象が激しく悪かったのがその最たる理由であろう。

くそぉ・・・・・・あいつめ・・・
結局最初から最後までママ先生の手、握りやがって・・・・・・

「834、835、836、837・・・・・・」

ああ・・・なんでだろう・・・
なんか頭が・・・ボーッとしてきた・・・・・・

しかし脳裏にイデアの白い手を握ってるシーモアの顔が浮かぶと、
無性に腹が立ってきて、
アーロンは意地になって打ち込みを続けた。

ちくしょう・・・こんなことで負けるものか・・・
暑さなんて・・・

心頭滅却すれば、火もまた涼し!!!

しかしあまりに無謀だ、アーロン。
常夏の島・ビサイドにて、しかも浜辺で、
この炎天下、日陰にも入らずそんなことをしていては・・・・・・

「996、997、998、999、1000!!!」

やった・・・やったぞ・・・
自分で自分を誉めてあげたい・・・・・・

そしてそのまま、
浜辺でバッタリと倒れこんでしまったのである・・・・・・


「気がついた?」

なんだ・・・頭・・・・・・
冷たくて、気持ちいいな・・・・・・・・・

ゆっくりとアーロンが目を開けると、
目の前に見たこともないほど巨大な桃が二つあった。

うぉっ、な、なんだこれは・・・!!

「熱中症になったのよ。ほんとに無茶なんだから・・・」

お・・・おおお、
桃が・・・桃がしゃべった・・・・・・・・・

まだ意識はハッキリしていないようだ。

「桃・・・桃が・・・・・・・・・」

額の冷えピタをちょうど貼り変えていたルールーは、
少し体の位置をずらして、アーロンの顔を覗き込んだ。

「桃?桃が食べたいの?」

アーロンはそこで初めて、気がついた。

い・・・今のは・・・・・・桃じゃなくて・・・・・・・・・  
うーーーーーん・・・・・・

「まぁ大変!鼻血まで出てきたわ!」

日射病で倒れたアーロンは、医務室に運ばれ、ルールーに手当てされていた。
この事件以来、ジタンがなんやかんやケガをしては
医務室通いするようになったということは言うまでもあるまい・・・。

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