石の家 5話:罪と罰
直前の画面に戻る2004/01/08 Written by サエ

「はあ〜〜〜っ、ありがたやありがたや・・・」
「生神様ぢゃ、生神様なのぢゃ・・・・・・」

ビサイド村は今、大変なことになっていた。
ある日、ふらりと村にやってきた輝くばかりの美女が
村の生活全てを変えてしまったのだ。
彼女は孤児院を経営しておりそのための住居を求め、
ここビサイドにやってきたと言う。
村人は全員一致で彼女のために
寺院を孤児院として提供することにしたのであった。
祈り子様が石化された後、何故か寺院は
シューティングチャレンジの場となっていた。
信仰の深い年寄り衆にしてみれば
それはまさに罰当たりな行為であったので
彼女にここに住んでもらうことのほうがよっぽど有意義に感じられたからである。

かくして。

イデアは住居を提供してもらったお礼に
日に一度、寺院にて村人との交流を持つようにしたのである。
階段上から一同に向かい声高らかに歌い上げるイデアの様子は
それはもう、まさに輝くばかりの美しさであった。
それは決して後ろに背負った金飾りの所為だけではあるまい・・・
この歌を聴くために
爺様婆様、老いも若きもこぞって寺院に参拝するようになり
おさい銭ならぬ貢物まで持参してくるのが日々の習慣となっていった。

こうして今日の日課が終わり施設内へ戻ってきたイデアに
ツォンが冷たい飲み物とタオルを差し出す。

「本日もお疲れ様でした。」
「これも学園経営のためですからね。」
「お陰様で、寮の設置もだいたい終わりました。」

それは至って簡単で、寺院の階段脇にあるそれぞれの小部屋の
向かって右側が男子寮、左側が女子寮としてわりあてられていた。
実は隣同士なのではあるが
寮から出る時間帯が微妙にずれるようスケジュールされているので
男子女子がお互い出会うことは(今のところ)ない。
寺院で行われていたシューティングは
そのまま子供たちの格好の遊び場となっていたことは
年寄り集には内緒である。
今までほとんどの子供達は肉弾戦で戦闘していたので
拳銃を使うことに不慣れであった。 その点、アービンには手馴れた武器だ。
何時も物陰でメソメソ泣いていた軟弱な彼がこの時だけは
誰よりも獲物を打ち落とし、
子供達からの賞賛の嵐を受けていたのである。
見かけで判断してはならないという教訓を
子供達は遊びながらもしっかり学んでいったのであった。

さて・・・・・・

男子生徒の女子寮夜這い作戦はどうなったであろうか?


夜這い決行の「翌日」
いつものイデア礼拝に来た村人達は直ぐに異変に気付いた。
普段なら、明るく賑やかに寺院内を遊びまわっている子供達が
誰一人いないからである。
ひょっとして、孤児院をここから引き払ってしまうのではないか・・・!?
慌てた村人が整理券を配っていたツォンに尋ねてみると
子供達は今、探検に出払っていると聞かされた。
イデアがここからいなくなるわけではないと教えられ
皆安心して彼女の登場を待ちわびたのであった。

その子供達・・・・・・
不埒な夜這い作戦に参加した男子は今、
ビサイドの隠された遺跡を探すよう課題を与えられ
島中を駆け回っていた。
実はこれは昨晩に対するお仕置きであり、遺跡を発見するまで
寺院出入り禁止を喰らってしまったのである。
美味しい食事、暖かいベッドがないどころか
肝心のママ先生に会うことも出来ないと聞き、子供達は顔面蒼白である。

「畜生、なんでこんなことになったんだっ!?」
「ご、ごめんね、皆・・・僕が変な事言ったから(ぐすぐす)」
「アービンの所為じゃねえって。」
「そのなんとか装置の所為だもんよ。」
「そんなはずないし。僕の装置は完璧だし。」
「な〜んか短い冒険だったよな〜。」
「まさか台所上が、ママ先生の部屋につながってたとはなぁ・・・」

イデアは、祈り子がいた部屋に自室を構えていた。
しかし階段からわざわざ降りるのもめんどくさいので
台所の上にワープ装置を設置していたのである。
アービンは偶然、
ツォンがイデアの部屋にある教材を取りに行く所を目撃したのである。
・・・やっぱり、薄くアービンの所為なのだろうか・・・

子供達はこの冒険の代償が
イデアに会えなくなる程重いとは思っても見なかったので
これに懲りて女子寮に忍び込むことはこれ以来、試みなくなったそうである。

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