石の家 42話:希望の轍
直前の画面に戻る2004/03/11 Written by サエ

ビサイドの海岸を元気に子供達が走り回っていた。
平々凡々なその姿は・・・・・・
ビサイドガーデンの生徒達なのであろう。
一体どれぐらいの子供達が在籍しているのだろう、
もはやシド学園長にも把握しきれない程
その生徒数は膨れ上がっていた。
全寮制となっているので、ホントに手当たり次第
入学許可を出しているのだ。
中には、年齢を偽って申告してくる子供―――
いや大人もいるのだが
さすがにそういった輩は排除される。
しかし既に生徒数は臨界点に達していた。
講師陣の目を盗んで遊び呆ける子供達も出てくる始末。
今海岸で遊んでいるのは、そういったグループの1つなのであろう。

パッセ「こども団!しゃきーん!集まれっ!!」
ハナ「こども団!しゃきーん!集まれっ!!」
タロ「こども団!しゃきーん!集まれっ!!」

パッセの掛け声を聞いて大勢の子供達が集まってきたが
一人だけ、砂浜に倒れこんでいる子供がいた。
心配そうに、別の子供が助けに駆け寄っていく。

マローダ「おい、しっかりしろや・・・」
イサール「ああ、マロー・・・僕はもう駄目だ・・・・・・」
パッセ「こら、イサール!!」
「例え兄弟とはいえ、サボリは許さないのだっ!」
タロ「許さないのだっ!!」
ハナ「だっ!!」
イサール「パッセ兄ちゃん・・・僕には、無理だよ・・・」
パッセ「ダメだぞ!末っ子だからって甘やかさないぞっ!」
マローダ「兄貴、勘弁してやれよ。イサールは病弱なんだからよぉ。」
パッセ「しっかたないなぁ〜じゃ邪魔にならないように隅っこにいてよね。」
「こども団、しゅっぱ〜〜つ!」
こども団「おーー!!」

パッセはこども団を引き連れ、今度は海岸の崖登りを始めた。
元気一杯のパッセを見て、イサールは一人愚痴っている。

イサール「僕にはあんなパワーはないよ・・・」
マローダ「イサールはどっちかっちゅ〜と召喚士気質だもんな。」
イサール「マロー兄ちゃんも、遊んできていいよ・・・」
マローダ「おめぇをほおって置くわけにもいかねぇつうの。」
「もちっと、横になっとけや。」

頷いたイサールはマローダの膝を貸してもらい
静かに寝そべった。
見上げた青い空には白い雲―――
穏やかな天候に恵まれたビサイドは
病弱なイサールにとっては最適の療養地であった。
新校開設を聞きつけた両親が
ついでに兄弟全員分の入学手続きをしたのである。
悪戯坊主の長兄パッセはここであっと言う間にこども団を結成し
そのリーダーとして毎日元気に遊びまわっていた。
次男のマローダが、代わりにイサールの面倒を見てやっているのだ。

マローダ「でもおめぇもよぉ〜、もちっとしゃっきりしろや。」
「いつまでもそんなんじゃ〜笑われちまうっつう〜の。」
イサール「う、うん・・・・・・」
マローダ「それにしても・・・あの光の家の子供達・・・」
「かわい子ちゃん揃いだったよなぁ・・・」
イサール「そ、そうだったね!!」

現金なもので、イサールは途端にガバッと起き上がると
学園祭で見た「白雪姫」の話を熱心に語り始めた。
イサールはよっぽどあの主役の女の子が気に入ったのか、
ついさっきまで青い顔して寝込んでいたくせに
今じゃ立ち上がって元気に熱弁を振い
自分なら、立派に王子役を演じてみせる!とまで言ってのけた。

・・・・・・おいおい・・・・・・
せいぜい、ねぼすけかてれすけぐらいだっつう〜の・・・

とは言え、元気になったことはいいことだ。
自分もいつまでも休んじゃいられないとばかりに
イサールはパッセ兄ちゃんの方へと元気に駆け出して行った。

このままイサールも・・・、
せめてパッセ兄貴の半分ぐらい腕白になってくれればなぁ・・・

おかーさんのような心境でマローダもその後を追ったのだった。
ビサイドガーデンの膨大な生徒数の中に埋もれ
もう二度と会う(登場する)事もないだろうが、
この3兄弟に幸あれ!

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