石の家 30話:ゆらゆら(開校編・その6)
直前の画面に戻る2004/02/25 Written by ノア

「ああ、心配じゃ、心配じゃ・・・」

トワメルは式典が始まるまで、子供たちが到着するのを
今か今かと首を長くして待っていた。
そこへ、人々の動いた気配を察知して、
慌ててそっちを見たトワメルは、
先頭にいた人物を目にした瞬間に、我を失ってしまった。

それは人の形をした「美しい何か」であった。

あ、あんな人間がこの世にいるはずはない・・・

マイカ総老師の言葉もメイチェンの挨拶も、
もうトワメルの耳には何も入ってこなかった。
ただただその麗人だけを見つめていたのである。
黒い服に身を包んだその麗人は、
トワメルの目の前で少し退屈そうに座っていた。
終わりなきメイチェンの挨拶を受けて、その人は・・・
少し欠伸を噛み締めていた。

ワシは・・・あのアクビになりたいのじゃ・・・

ちょうどそのとき。
シーモア君は、子供のころからいつも優しくしてくれていたトワメルが、
新しい学園の教師陣の中にいるのを見つけ無邪気に手を振ってきた。
なのに・・・
確かにこちらを見ているはずなのに、
トワメルからは何の反応も返ってこなかったのであった。
思わず舌打ちするシーモア君。
トワメルに対する親愛感2ランクダウンである。


「全生徒諸君、健闘〜〜を祈るっ!!」

マイカ総老師の締めの言葉で呪縛が解けたトワメルは、
イデアの元へとダッシュした。
気がつくと、シド学園長やマイカ総老師も駆けつけてくる。
負けてたまるものか!!うおおおぉ!

真正面にいたのが功を奏したのか、
一番早くイデアの前に到着したのはトワメルだった。

この美しい双眸には今、ワシしか、映ってないのじゃ・・・!!


「とんとん」


誰かに肩を叩かれた。

ええぃ、ワシの至福の時を壊すでない!


「とんとん」

ふと気がつくと・・・もう式典はとっくに終わっていた。
式場は綺麗に片付けられ、黒山の人だかりも今や人っ子一人残っていない。
マイカ総老師が、一人海岸で呆けているトワメルを心配し
保険医のカドワキ先生をよこしたのであった。
トワメルは不覚にも、
美化身イデアを前にして、そのまま意識をなくしてしまったらしい。
ガックリと肩を落としながら、トワメルはビサイド学園の食堂へと向かった。
一応通いの身、挨拶をしてから帰ろうと思ったのだ。

オダイン「トワメル殿、大丈夫でおじゃるか?」
マイカ「イデア殿も心配されておりましたぞ。」

イデア!?
おお、なんという美しい響き・・・
きっとあの方の名前に違いない・・・

ラムウ「あのような方にワシも召喚して欲しいものだ・・・」
シド学園長「ここにおりさえすれば、可能性はありますぞ。」
ナーダラ「学園内部の施設には、随分興味を持ってたからねぇ。」
「これからちょくちょく来るんじゃないかぃ?」

な、なんだって?
あの方がこの学園内にも・・・!?
ここに居さえすれば、いつでも会えるということなのか・・・

リン「ああ、トワメル殿。帰られるなら急がないと。」
「ルカから出るグアドサラム行きの最終に間に合いませんぞ。」
トワメル「ままままま待ってください・・・」
「ワシも常勤にして欲しいのでごじゃる・・・」

グアドサラムの治安はどうなるんだ。
イデアの魅力に取り憑かれたものがこうしてまた一人増えたのであった。

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