石の家 27話:円卓の騎士(開校編・その3)
直前の画面に戻る2004/02/23 Written by サエ

「工事はすこぶる順調でしたぞ。」

マイカ総老師はそう言いながら
オダイン魔法研究所へとやってきた。
これから「ビサイド・ガーデン」関係者一同の会議が
行われるのだ。
着席している者は議長のオダイン博士に共同経営者であるシド学園長、
それとビサイド・ガーデンで教鞭をとる予定の講師陣である。
マイカ総老師はこの会議に出席するために、
わざわざ早朝からビサイドの視察を行い
その足でオダイン魔法研究所までやってきたのであった。
マイカ総老師は、宗教・歴史の講師も兼任している。

「わたしは学園が完成するまでは彼の地に行けませんからね。」
「マイカ殿に報告をしてもらわなければ。」

シド学園長は、自分がイデアの元夫であることを
最大限に利用していた。
イデアの魅力を知った者にとっては
彼女との強力な関係を持つ(持った)事実は
どんな黄金をよりも絶大な効果を発揮した。
それ故、存在感ゼロの眼鏡の小太り中年男であろうとも、
シド学園長を侮る人物はここには誰もいない。
そして、現在イデアがバツイチだからこそ、
全員に「希望」が沸いてくる。
そのためには、イデアに関するあらゆる情報が知りたい。
シド学園長はそれを身をもって体得している
(と思われている)のだから頭があがるわけがないのだ。

そして狡猾なシド学園長は、ビサイド・ガーデンが開校するまでは
ここ魔法研究所でジッと待機することを選んだ。
もし、今、自分がビサイドへ赴いて・・・
肝心なイデアから冷たい目で見られてしまっては元も子もないからだ。
それより、彼の地の最高責任者・マイカを派遣して
確実に学園を設立し、既成事実を作ってしまえばいいのだ。
ビサイド・ガーデンに入園する児童には何の責任もない。
石光の学園に入れない児童を引き受ける、
あくまでサポート的な学園なのだから
イデア達に文句は言えないはずだ。
学園が開校してからじっくり登場の方が自分の株も
上がると言うものだ。

オダイン「エーコ殿はどうしていたでおじゃるか!?」
マイカ「いや生憎、早朝の視察でしたのでおりませんでしたな。」
トワメル「シーモア様は、虐められておりませんですか!?」
マイカ「残念ながら彼も、今回の練習には参加しておりませんでしたなぁ。」
トワメル「そ、そうですか・・・(くすん)」

トワメルはシーモア君が心配で、少しでも近くで見守りたいがため
躾・一般教養部門の講師として応募していたのだ。
彼はグアドサラムからの通いになる予定なのだが
イデアを見れば永住する決意をすることは
まだ誰も(本人も)知らない・・・。

「しかし・・・肝心な運動部門の講師が物足りないですな。」

書記役を務めていたリンがふと漏らした。
彼は、流通・経済部門の講師でもある。

マイカ「うむ。ブリッツはスピラの国民的競技である故・・・」
「是非とも、講義として取り入れねばなるまい。」
オダイン「それならば、スター選手がいるはずでおじゃる!」
リン「その件ですが、あちらには伝説のスーパースターが既にいるとの噂がありまして。」
オダイン「引き抜くのでおじゃる!」
マイカ「う・・・む・・・それは、難しそうですな・・・」

マイカ総老師は何故か遠い目で考え込んでしまった。
彼が視察に訪れた時、
ジェクトがイデアに馴れ馴れしく肩や腰に手を回すのを
彼は目撃していたからだ。

今の学園で十分、イデア殿と触れ合えるのだから・・・
わしだって、どっちかっちゅうたら、
向こうの学園に就職したいぐらいだし・・・

リン「引き抜きですか。それは使えそうですね。」
シド学園長「しかしマイカ殿の話では・・・」
リン「いえ、ジェクト殿ではありません。」
「ワッカ殿です。」
マイカ「おお!!そういえば、確かに早朝のコーチは彼でした!」
トワメル「あの学園には、体育教師が2人もいるのですな。」
オダイン「1人ぐらいわけてくれても罰は当たらないでおじゃる!」
マイカ「じゃが・・・確か嫁も講師ではなかったか?」
シド学園長「尻に引かれてるタイプなので嫁さんを説得できれば問題ないでしょう。」
「リンさん、お願いしますよ。」
リン「難しいですが、頑張ってみましょう。」

しかし、ルールーに塩をまかれてアッサリ交渉決裂した事は
また後の話である・・・。
ブリッツはルカゴワーズの面々に直々に教わる事で解決したそうだ。
着々と、準備が進む中
いよいよ、ビサイド・ガーデン開校の日がやってくる!!
その開校セレモニーでは果たして何が・・・!?

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