石の家 23話:バトルロワイヤル
直前の画面に戻る2004/02/05 Written by サエ

エーコは以前、ワッカのお土産屋さんがあった店舗を
モグにも手伝わせながらせっせと掃除していた。
新婚当初、ワッカはここで商売を営んでいたのが
商才はからっきしだったようであっさり店を潰してしまい、
今では荒れ放題となっている。
まあ、だからこそ農業へと転職し大成功を収められたとも言うのだが。
エーコ達はその旧ワッカ邸を改装していたのである。
そして店先に立てられた看板には

『エーコの恋愛相談室・ビサイド支店』と書かれていた。
(短編集 FF9「恋愛相談室」参照)

すると早速ドナがやってきて
テント前を恥ずかしそうに行ったり来たりしていた。
大喜びで相談に乗るエーコ。
生徒達は物珍しさもあり、ほとんどの生徒が訪れてきた。

しかし・・・

一人だけ相談にこない子がいた。
気になったエーコはテントに「休憩中クポ♪」の立て札をかけると
その子を探しに出かけていった。

エーコ「あ、いたいた!皆さん、ご機嫌麗しゅう♪」
シヴァ「まぁ、エーコ殿・・・」
「どうかしましたか?私の出番ですか?」
エーコ「そうねぇ〜、出番のようでもあり、ないようでもあり・・・」
「わたしが用があるのは、ティナちゃんなのよっ。」
ティナ「え・・・私・・・?」

シヴァとティナは
ビサイドの滝を見下ろす頂上でボーっとしていた所であった。
今まで縁のなかった同世代の子供達に囲まれ、ティナはかえって落ち着かないらしい。
しきりにシヴァに人気のない所へ行きたいとねだるのだ。
この頂上は隠された遺跡で更に暗号を解かねば
先へ進めない場所にあるので
ティナにとっては何よりホッと出来る数少ない場所であった。

ティナ「私に・・・なに・・・?」
エーコ「エーコ先生としては、ほおっておけないわけよ!」
「私に悩みを打ち明けてみな〜〜い?」

エーコはティナと並んで崖に腰掛け、足をブラブラさせた。
自分よりも小さいエーコを見て
ティナから緊張の糸が徐々に解けていく。

エーコ「ねぇ、ティナは「男の子」って興味ないの?」
ティナ「男の子・・・乱暴でガサツで無神経な存在・・・」
エーコ「(!?こ、これは・・・強敵なのだわっ!?)」
ティナ「私は男の子より・・・シヴァがいてくれたら、それでいい・・・」
エーコ「(!?ああ〜〜、駄目よ駄目っ!!)」

慌ててシヴァが助け舟を出す。
ティナの悲しい幼少期を聞いたエーコは考え込んでしまった。

エーコ「ティナちゃんの心を揺さぶる・・・ハプニングが必要なのだわ!?」
シヴァ「それがきっかけになれば良いのですが。」
エーコ「エーコ先生に不可能は事は、な〜〜〜いっ!」
「任せて任せて〜〜〜!」
シヴァ「それと・・・ティナの出生の事は他の人にはご内密に・・・」
エーコ「勿論よっ。それに貴女のこともねっ!」
「ふふ・・・それにしても貴女の子供時代が見れるとはね。」
シヴァ「嫌ですわ・・・でもそれも、まだ皆が子供だからです。」
「やがて皆大きく成長するでしょう。」
エーコ「そうねぇ、その時には流石にバレるわよね。」
シヴァ「それまでに・・・ティナが愛を知ってくれれば、私は満足なのです。」
エーコ「くぅ〜〜、泣ける話なのだわっ!」
「大船に乗ったつもりでエーコ先生に任せなさい!」

エーコはドンと小さな胸を叩くと
腕を大きく振り振り、山頂を降りていった。
そしてそのままイデアの所へ直行し
是非是非、男子女子の更なる発展のために
交流会を催すよう提言したのであった。
当然ツォンは大反対していたが
イデアにやんわり諭されて、ゴーサインが出たのであった。

それから忙しかったのはワッカ・ルールー夫妻である。
今では総勢30名以上を有する宴ともなれば
ワッカの豪邸で行うしかない。
てんやわんやになりながらも準備を終え、その夜、
両校の親睦パーティが開催された。

ユウナ「いつもの晩御飯と雰囲気違うねぇ。」
パイン「随分大げさだ・・・」
リュック「んでも、これンマイよぉ〜〜!!」
「今日はご馳走多いね〜〜!」

サイファー「美味い!・・・ん?なんだよ、お前、食わないのか?」
雷神「(・・・・・・あの人の前で・・・)」
「(食べ物なんか喉を通らないんだもんよ・・・)」

そう、今日はいつもの見慣れた食堂ではなく
豪華な大広間での立食パーティ形式になっていた。
普段なら、幅広の長テーブルに男子・女子別れて座っているのに
今日は邪魔立てする障害物は何もなく
振り返ればいつでもどこでもキスティを見ることが出来る。
口うるさいツォンも何故だか今日は静かで
ジタンはこれ幸いにと
あちこちの女の子にコナをかけまくっていた。
それにつられるかのように、男子女子が仲良く歓談し始める。
しかしティナは相変わらず、
目立たぬように壁の花になっていた。


シヴァ「(エーコ殿、これではかえって孤立してしまいます・・・)」
エーコ「(隠し玉はこれからよっ!)」
イデア「さぁ皆。今宵のパーティはダンスでお開きになりますよ。」

そう言うと、イデアは森の楽団員さん達に合図を送った。
そして手本のつもりか、隣にいたツォンと踊りだした。
ジェクトが地団駄踏んでいたが、ハッと吾に帰ると
自分はルールーと踊りだした。
ワッカが半狂乱になって泣き叫ぶのもお構いなしで
ここぞとばかりに体を密着させている。
メイチェンは全てを悟った顔付きで、シェリンダを相手に踊り始めた。
ユウナレスカは大喜びで
ドナ、ルブランと手を繋ぎ踊りだす・・・。
目敏いはずのジタンはしかし、
美少女軍団を目の前にして一体「誰に」申し込めばいいのか!?と
思考回路が止まってしまっていた。
アービンもセフィに・・・とは思っているが
どうしても恥ずかしくてその一歩が踏み出せないでいる。
躊躇している男子の中で
ついに、女子にパートナーを申し込む勇者が現れた。
しかもそのお相手は、ティナだ!!
エーコとシヴァは思わず万歳三唱をする。

ティナ「えっ、わ、わたし!?」
スコール「うん、俺と踊って欲しい。」

別に学級委員としてイデアから因果を含まれたわけではない。
スコール自身、元々孤独癖の強い子供だ。
いつも少し寂しげなティナを見ていて気になっていたのだ。
光の家生徒達にはない、
彼女の奥ゆかしい繊細さに知らずに魅かれていたのである。
スコールはティナを巧みにリードし
二人は可愛らしくステップを踏み出した。
ティナは顔を赤らめ、それでも懸命にスコールとともに踊りだす。
踊り始めた二人を見て、ようやく呪縛が解けたアービンも
セフィにパートナーを申し込んでいた。
既に女子同士で踊り始めている子もいるので
うかうかしているとあぶれることに気付いた男子は
女子争奪戦へと突入していった。

・・・翌日。
エーコの相談室にはめでたく生徒達「全員」が訪れたという・・・

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