全員周りの光景に圧倒され、未だに言葉を失っているようだ。
皆黙ってうなずくと
放心状態のまま、イデアの後を大人しく付いていく。
歩いているうちに、子供達はようやく雰囲気に慣れて来たようだった。
シンラ
「これ・・・・・・凄い文明だし。」
ギップル「だよな!?アルベド族でもこんな機械知らないよなーー!」
アニキ
「ふん、お前でも知らないことあるんだな!」
ダチ
「お前だって、知らねぇだろうが・・・・・・」
アニキ
「ふんふんふんっ!!」
ザナルカンドを歩く人々は、皆、同じ方向へ興奮気味に歩いていた。
その波に沿うようにイデア一行も歩いていると
目の前に巨大なブリッツスタジアムが姿を見せた・・・!
ワッカも思わず唸り声を挙げる。
そのスタジアムからは、
重低音のロックナンバーがビンビンに流されていた。
場内は、その音楽さえかき消されるぐらいの
観客の割れんばかりの大歓声で満ち溢れ
DJがこれから始まる試合の模様をひっきりなしに伝えていた。
「東A地区のエイブスと、南C地区のダグルス!」
「今日こそ、あの幻のシュートが炸裂するのか!? 」
「期待するなってのが無理だよなぁ〜〜〜!」
どうやら、ザナルカンド・エイブスとダグルスの優勝決定戦のようだ。
黄と黒を基調とするユニフォームがエイブス、
ワインカラーと黒がダグルス・チームらしい。
そうしてついに決定戦の戦いの火蓋が切って落とされた。
その中心にいるのは、一人だけ全く別の服を着た・・・・・・
いや、どっちかっていうと、「着ていない」男性だ。
ワイルドに無精ひげをはやし、髪の毛は伸ばし放題に伸ばし、
一応、前髪が入らないようにネクタイ(何故?)でねじり鉢巻をしている。
おまけに上半身は、裸だ・・・(だから、何故?)
その逞しい胸板に女性陣は濡れた視線を注いでいる!
白熱した戦いは続き――
終盤になって、その裸の王様がボールを手にした瞬間、
観客達は期待を込めて一斉に足踏みを始めた。
それはまたたくまにブリッツスタジアム全体に広まり
巨大なスタジアムがその地響きに身を振るわせる。
子供達もその熱狂に巻き込まれ、
真っ赤な顔をしながら一生懸命足踏みをしていた!
そして、観客の期待に応えるかのようにその選手は
『幻のシュート』をついに放ったのであった・・・・・・!!
「でたーーー、ジェクトシュート2号だっ!!」
「これで、3対1!」
「エイブスチームの優勝はもう決まったも同然だっ!」
そこで試合終了のホイッスルが高々と鳴る。
チームメイトに抱え挙げられ、
その裸の男性―ジェクトは両手を突き上げ、歓喜を露にしていた。
子供達も目をキラキラさせながら
いつまでもいつまでも、ジェクト達を見つめていた。
イデア
「では、私はこれから用事がありますので・・・」
「先生方、生徒達を連れて自由行動にしてもらえますか。」
ツォン
「わかりました。」
ルールー「では、4班体勢にしましょうか。」
すっかり先生業が板に付いたルールー、
手早くメイチェン、ワッカ、ツォンそして自分のグループに生徒達を分け
それぞれがザナルカンドの街へとくりだしていった。
ワッカ
「おめぇら、見たか、今の!?」
サイファー「すっげーー、俺もあのシュート打ちたい!」
雷神
「ワッカコーチ、オイラ達にも教えて欲しいんだもんよ!!」
ワッカ
「(ドキっ!)そ、それにはなぁ〜、もちっと練習を重ねて・・・」
シーモア
「うわ〜〜!あれ、見て!!」
話にすっかり夢中になっていたワッカ班、気が付けば、
中心街を外れた郊外まできていた。
そこには・・・・・・
【「路地裏の少年」へと続く】