石の家 15話:Jump(運動会編・その4)
直前の画面に戻る2004/01/22 Written by ノア

アニキ「やだやだやだぁ〜〜〜、死ぬぅ〜〜〜!!!」
ダチ「シドさん、勘弁してくださいよぉ〜〜〜!!!」
シド「うるせぇ!四の五の抜かしてねぇで、サッサと飛び降りやがれっ!」

三人は今、飛空艇甲板に出ていた。
場所はナギ平原・・・・・・の、上空。

シド「あの赤いとさか頭の野郎ときたら!!」
「大事な畑をつぶされたとかイチャモンつけやがって!」
「あの後オレ様に膨大な慰謝料ふっかけてきやがったんだ。」
「あいつのそばには、もうオレは二度と、船をおろさん!」
アニキ「で、でも、この高さからじゃ・・・」
シド「馬鹿野郎!マスターはいっつもこっから飛んでるだろう!」
ダチ「俺たちはハイペロ族じゃないっすよ!」
「あれは・・・人間には無理だぁ〜〜〜〜〜〜!!」
シド「おいっ!憧れのユウナを守るんじゃねぇのか!」
アニキ「うう・・・・・・」
シド「やいっ!アニキだとリュックがほったらかしにされるからと、」
「俺が守るなんて気の利いたセリフ吐いたのはどいつだっ!」
ダチ「うう・・・・・・」

リュックが光の家に転入して以来、
今度は二人がかりでうるさくなってしょうがなかった。
ユウナに目が釘付けだったアニキは気がつかなかったのだが、
リュックが心配だったダチは、
チラリと見えた男子生徒のチェックもしっかり怠っていなかった。
さすが、情報解析はお手の物か。
そしてそこでにっくきライバル、ギップルを見つけたのであった。
最近、見ないと思って安心していたのに、
まさかよりによって同じ学校に既にいたとは・・・・・・。

ギップルの存在をアニキに教えてからは、
アニキの動揺はピークに達していた。
それはダチも同様である。

アニキ「ギップルがユウナに手を出さないわけがない!」
ダチ「ギップルがリュックに手を出さないわけがない!」


あたふたあたふた
どたばたどたばた


毎日毎日、この二人に、操縦桿を握っているときも、
風呂に入っているときも、
挙句の果てはトイレに入ってるときですら、
転入させてくれぇ、と懇願され続け、
シドもとりあえず連絡だけでもと入れてくれたのである。

イデア「アニキくんとダチくんですね。よろしいですよ。」

いつまでも耳元で聞いていたい美しい音色に
ボーッと聞き惚れているところを、
二人の子供にジーッと見られ、慌てて電話を切ったシドであった。

未来の自分の花嫁候補を・・・むふーむふー、というツォンと違い、
イデアはもう少し広い視野で石の家を結成していた。
無論土台は一緒だが、精鋭部隊を周りで固めるには、
容姿に秀でているだけではいかない。
そう、一芸に秀でているものであれば、それを伸ばしてあげるのだ。
イデアの将来は、
そういった厳選されたものだけで固められていくのだ・・・。


そんな経緯でナギ平原上空にいる三人。


しかしいつまでも愚図愚図している二人にぶち切れたシドは
いたいけな子供二人を甲板から蹴り落とす暴挙にでた。


獅子は自分の子供を崖先から落とすというが・・・。


ぎゃあああぁぁ!!


注目度120%で見事にまっ逆さまに落ちていく二人。
大勢の観衆の前で二人は、地面に激突死・・・
する寸前に、見えない羽毛でくるまれたように、
フワリと一瞬の無重力を感じた後、
両の足できちんと地面に降り立っていた。

その目の前に、イデアが美しく微笑んでいる。
これはこの二人には衝突死するよりも衝撃的であった。
なにせ男ヤモメで育てられていたのだ。

美しすぎて、同じ人間とは思えない・・・
この人はきっと・・・違う種族に違いない・・・
ぼーーーーーーーーーっ

「アニキくんとダチくんね。」
「みんな、次のアトラクションのために移動したところなの。」
「さぁこちらへいらっしゃい。」

イデアへの刷り込み第1段階といったところか。
望めば世界中の人を虜に出来る魅力を持ちながら、
イデアは絶えず集中して、
フェロモンが全出力しないようにしなければならなかった。
そう、今から彼女にゾッコンになっては、
経験すべきものがなにも経験することが出来なくなってしまう。
初恋も失恋も達成感も挫折も全て経験して
一人前になってからでいいのだ。

「あなた達が守ってあげたい人は、あちらに・・・・・・」

白魚のような美しい指先が、とある方向を指した。
催眠術にかかったように呆けていた二人の子供は、
その方角にユウナとリュックを見つけ、一気に覚醒した。

子供らしさを取り戻した瞬間ともいえるかもしれない。

アニキ「はっ、こうしちゃいられねぇぞ!」
ダチ「はっ、早くみんなのところへ行かねぇと!!」
アニキ「せ、せ、せ、先生・・・(ぽっ)」
「みんなのとこ、行っていいですか?!」
イデア「そうね、ちゃんと自己紹介してらっしゃい。」
ダチ「はいっ!!おい、ボケッとしてんなよ、行くぞ!!」

二人の子供が見事な早さで翔けていく。
石の家、光の家も、だいぶ人数が増えてきたようだ。
ああ・・・
メイチェン先生、いつ全員の名前を覚える日が来るだろうか。

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