石の家 1話:楽園
直前の画面に戻る2004/01/05 Written by サエ

熱帯の木々で囲まれた南の小さな島ービサイドー
白い砂浜、抜けるように透明な美しい海が自慢の素朴なリゾート地である。
海岸へとつながる遊歩道を歩いているのは
シドとイデア夫妻であった。

「どうです、いい所だと思いませんか?」
「はい、特にこの海が気に入りました。」
「ここならば素敵な暮らしがきっと出来ることでしょう。」
「そうですともそうですとも!」
「ではこれを機会に是非アタシと復縁して、」
「二人の愛をこの地で育もうではあ〜〜りませんかっ!!」

鼻息荒くしたシド元学園長は
その巨漢からは想像もつかない程の俊敏さを発揮し
隣にいたイデアに飛び掛っていった!!
が、その芋虫のような太い指がイデアに触れる寸前
シドはあっさり元の世界へと送り返されてしまう・・・
イデアは清々しく伸びをすると
ゆっくりとビサイドの海岸へとやってきた。
そこでは既に「石の家」の子供達、
サイファーやスコール達がブリッツボールに興じて遊んでいた。

「さぁさぁ、みんなそろそろ上がりなさい。」
「貴方達に紹介するお友達がいますよ。」

イデアに呼ばれたスコール達が海岸まで戻ると
そこには見たことのない少年達が並んでいた。
いや、どこかで見たことあるような・・・?

「みんなも知っての通り。」
「これから私たちはここ、ビサイドで暮らします。」
「新しいお友達も増えますから、仲良くして下さいね。」

そして、隣に並んでいる子供たちに自己紹介を促す。

「お、オイラ、雷神、って言うんだもんよ。よろしくなんだもんよ。」
「僕・・・シーモアって言います。」
「俺は、アーロン。」
「ヌージ。」
「ギップルってんだ!よろしくな!!」 「僕はバラライだよ。」

皆、年の頃はスコール達とさして代わらないように見える。
雷神だけが頭一つ・横三つ分、大きかったが・・・。
アーロンとヌージは一匹狼のようだ。
ちょっと斜に構え、軽く頭を下げただけで輪に入ってはこない。
ギップルはあっという間に初代組と打ち解けており
もうゼルと鬼ごっこをはじめた。
バラライは、唯一人、橋の上でぼんやりしているアービンに近づいていった。
アービンだけは、ここに来てからずっと寂しげだったのだが
サイファーとスコールはそんな事よりも(嘘、ゴメン)
シーモアが気になってしょうがなかったのだ。
彼は自己紹介する前も後も しっかりイデアの手を握って離さなかったからである。

「さぁ、シーモアも皆と一緒に遊んでいらっしゃい。」
「ママン、僕もう少しママンといる。」
「(ま、ママン!?)」
「シーモア。これから私のことはママ先生と呼びましょうね。」
「はい、ママン・・・・・・ママ先生。」
「よぉ〜、シーモア。俺様が石の家のシキタリってもんを教えてやるぜ。」

シーモアがサイファー達に岩陰へ連れ込まれていくのを
アービンは橋の上からただぼんやり眺めていた。
自分の横に、いつの間にか見知らぬ少年が腰掛けていることに
声をかけられ始めて気がついたほどだ。

「こんにちは。僕、バラライ。」
「君はお引越、嬉しくないの?」
「あ・・・・・・新入生だよね。僕、アービンだよ。」
「僕、ここ好きだけど、でもね、でもね・・・」
「僕、セフィがいないと楽しくないんだ・・・・・・」
「どうしていないの?」
「わかんないんだ。」
「何故か、今日から別々に暮らすことになるって言われて・・・」

膝に顔をうずめて泣きじゃくるアービンをどう励ましていいものやら。
オロオロしているバラライの目の前に
ブリッツボールが見事な放物線を描いて空から落ちてきた。
狙い違わず、それはアービンの後頭部を直撃する。

「やった〜〜〜、おおあったりぃ〜〜〜!」
「ああっ!?セフィ!?」

アービンの視線の先にはセフィや他の少女達がいた。
その後ろには引率者と見られる背広姿の男性も立っている。
セフィ達に気が付いたスコール達も駆け寄ってきた。

「セフィ、セフィーー!!」
「アービン、セフィがいないからってしょぼくれちゃ駄目だよ。」

どうやら男子と女子は、別々にクラス編成されたようだった。
エルオーネが女子の部に編入してきた生徒達を紹介してくれた。
リノアに風神、ユウナレスカにドナ・・・・・・
他にもたくさんいて、とても一度に覚えきれない!
子供達はその場で互いの自己紹介をはじめる。

そんな様子をイデアと並んで眺めているのは女子組担任を任命された
ツォン先生であった。

「そちらも無事に引越しが終わったようですわね。」
「いや、とりあえずと言った所です。」
「エーコ殿をこれから迎えに行かなければなりませんし。」
「ああ、そこにはジタンも居ましたね。では後で一緒に参りましょう。」
「女子組は、私にお任せください!」
「花嫁候補をまさか自分の手で育てることが出来るとは・・・まさに夢のようです。」
「私は一度、前の夫で失敗しましたからね。」
「二度と失敗しないよう、心して育てますわ。」

ー前の夫ー
シドを思い出すだけでイデアは恥ずかしくなる。
何故にあのようなブッサイクな男を選んだのか・・・
孤児院を作るという理念を理解してくれた唯一の男性ではあったが
所詮、それだけであった。
大きく成長した後の子供達に比べると何もかもが見劣りし、我慢できなかったのだ。
そこで、孤児院を別の目的で運営することにした。
優秀な男子を集め、
より自分に相応しい立派な男性となるよう育成することにしたのだ。
そこで女子を一緒に育てるには都合が悪いので 男子、女子組とに分けられたのであった。
光の源氏学園は始まったばかり。
これからここに集められる少年・少女の運命は?

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