新緑の美しい季節がやってきた。
満開だった桜が散り、葉桜となった頃
辺りは新芽が萌えさかる時期を迎え
その若々しいエネルギーで満ち溢れていた。
お陰でメイチェンはついつい、いつもより深く深く、
森の奥へとその歩を進めたのである。
すると案の定
「はて・・・?ここは一体、どこですかのぅ・・・」
気が付いた時には
鬱蒼と木々が生い茂る森の最深部までやってきてしまった。
時刻も既に夕方だ。
助けを呼ぼうにもこんな時間では誰も通り掛かりはしないだろう。
「仕方ありますまい。今夜はここで野宿と洒落込みますかの。」
天涯孤独の放浪者のメイチェンには
付き従う旅の供は誰もいない。
独り旅の気侭さから、その身を草叢の絨毯へごろりと預けると
瞬く間に眠りについたのであった。
「・・・もし?」
「爺さん?生きてるか?」
「こやつ、ウェアウウルフ・・・にゃ、見えんがのぅ。」
メイチェンは数人の男女に揺り動かされ
ようやく目を覚ました。いつの間にかお天道さんがのぼっている。
「爺さん・・・一体どっから来たんだよ?」
「さて?どっから来たんですかのぅ・・・」
「え〜、またお荷物増えちゃうの〜」
「!?お荷物とは誰のことぢゃ!!」
「記憶喪失が2人に増えても邪魔になるだけだろ。」
「もしかして・・・あなた方はバッツ殿にガラフ殿、レナ姫とサリサ姫の一行ですかな?」
「!?サリサ姫だって!?」
「私の姉姫さまの名前だわ!!」
メイチェンの背中に、ファリスの鋭い蹴りが入り
まだこの件は一行には内緒だと言うことがわかった。
「あいや失礼・・・ボケが大分進行しておりましてな。」
「あたしはメイチェンと申します。」
「時々、戯言を抜かしますがお許し下さい。」
「ここは、ワイルドナックの溜まり場だぞ。危ないから近くの村まで送ってやろう。」
メイチェンが立ち上がろうとした瞬間
木々の陰からそのワイルドナックの集団が襲い掛かってきた!
レナが「風水士」ジョブだったお陰もあり
地割れ攻撃であっと言う間に片付けてくれたが
メイチェンは肝を潰し、またまた座り込んでしまった。
「おいおい爺さん・・・困ったなぁ。」
「そうぢゃ、折角だからお主もジョブを選んでみんか?」
試しにクリスタルのかけらをメイチェンに渡してみると
意外にもそれは光り輝き、
どうにか勇者の端くれと認めてもらえたようだ。
メイチェンの黒魔道士!!
さそがし、凄腕の魔道士になることであろう・・・
という一行の期待は見事に裏切られた。
魔法を暗誦することは出来るのだがいざ戦闘がはじまると
「そもそも、初期の頃は回復魔法は4種類ありましてな。」
「ええ、ケアル・ケアルア・ケアルダ・ケアルガ、ですわ。」
「それが歴史を経るにつれ、3つにまとまったんですな。」
「呼称も「ケアルダ」から「ケアルラ」に変更されました。」
「攻撃魔法の三段活用と統一させたのか」
「単純に「ケアルア」が淘汰されたのかは、わかっとりゃせんのですわ・・・」
と、大好きな語り口調が始まってしまい
戦闘中に肝心な魔法を詠唱することが出来なかったのだ。
こうしてメイチェンの一人ファッションショーが始まった。
剣士になってみると
その豪剣に寄り掛かって立つのがやっとであった。
重い甲冑を装備しなければならないのでそれも当然であろう。
竜騎士となってジャンプの体勢をとってみても
片足をあげるので精一杯である。
狩人は、その軽い装備のお陰でなんとか様にはなっていたが
なんせ肝心要の敏捷さを持ち合わせていない。
弓矢に矢じりを構えている間に戦闘は終わってしまう。
故に、シーフも論外であった。
結局、どのジョブも今のメイチェンには使いこなすことが出来なかった。
とりあえず「すっぴん」で進むしかない。
「まったく、ガラフ以上のお荷物ね!せめて荷物持ちぐらいしてよね!!」
「(ヒ
ソヒソ)あいつ、正真正銘のお姫様なんだ・・・」
「(ヒソヒソ)我儘だけど、許してくれよな。」
いつの間にか・・・
メイチェンはFF5ワールドへ迷い込んでしまったようだ。
これからの彼の行く末は・・・