FF4 エブラーナ編 .2
Written by サエ

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丁度ポロムが総支配人室の特別キーを受け取るところであった。
総支配人室の部屋の天井は一面エメラルドグリーンのカーテンで覆われ
床はフカフカのオフホワイトのマットレスになっており
思わずダイビングしたくなる柔らかさだ。
部屋の奥には天蓋つきの特大ベッドが設置されている。
その天蓋からかけられている緑のカーテン越しに、人影が見えた。

「・・・エッジ、いる・・・?」
「・・・ポロムか・・・?」

投げやりなエッジの返事が聞こえ、カーテンが無造作に開かれた。
そこでは、どこかリディアの面影を持つ少女に膝枕されたエッジが寝そべっていた。
相変わらずのツンツン頭なのだがそれは彼の刺々しさを表しているようだった。
彼の蒼灰色の目は暗く沈んだままでとても今の状態を楽しんでいるようには見えない。
もっともその口元はマスクで隠されているので、表情は読み取れないのだが。

「ん・・・隣に居るのは・・・カインかっ!?」

ようやくベッドの上に座りなおすエッジ。
膝枕させていた少女に手で合図し、部屋から下がらせると
千鳥足でカイン達の所へとやってきた。

「よぉ〜カイン!一体、何年振りだよっ。」
「エッジ、お主・・・酒臭いぞ・・・」
「お酒は控えた方がいいと申し上げましたのに。」
「うるっせーーーい、俺様には、酒しか楽しみがないんだよっ!」

やおら隠し持っていた『美少年』の一升瓶を呷るエッジ。

エブラーナの復興は、上手くいったのだ。
順調に国は大きくなり、後は・・・

後は、リディアさえ、傍にいてくれたら・・・

エッジが幻獣界へ遊びに行くと
リディアはいつも嬉しそうに相手してくれた。
しかし、結局リディアが幻獣界から戻ってくることはなかったのだ。
何度リディアの元を訪れても、
彼女はエッジのプロポーズを受け入れてはくれなかったのである。

・・・いつからだろう、リディアに似た人を探すようになったのは・・・

緑の髪の少女、
ちょっと舌ったらずな喋り方をする少女、
母を失くした境遇の少女・・・

リディアをどこか思い起こすような少女を探すうち、
いつの間にか歓楽街みたいな場所がエブラーナの一角にできてしまった。
酒の味を覚えたのもこの頃だろう。
途中で出会ったコルネオにその一角を任せただけなのに
「ウォールマーケット」が出来て以来、
いつしかそこはエブラーナの中心産業となっていたのである。
しかしエッジには、そんなことはもうどうでも良くなっていたのだ。

(・・・リディアのいない世界なんて・・・)

自暴自棄になったエッジは、
リディアもどきの女の子達を自分の傍にはべらせては
無益な時間を過ごしてきたのだった。

カインはエッジのこの状況を見て、
自分の罪をまたしても思い知らされたのであった。
リディアは別に幻獣と人間のハーフというわけでもなく、
生まれ故郷のミストの村も復興している今、
彼女が幻獣界に留まる必要は全くないはずである。

それでも彼女が幻獣界に留まる理由・・・
彼女が蒼き星へ留まりたくなかった理由・・・?

それは、
カインとセシルが彼女の母親を手にかけた事が原因なのではないか。

例えその時操られていたとはいえ、間接的だったとはいえ、
カイン達がリディアの母を死に追いやったことは紛れもない事実。
ドワーフの城で、危機一髪の所を大人版リディアに助けられ
そのまま成り行きで旅を続けることになったが為に
彼女の真意はうやむやになったままだった。
カインは、あの時のリディアの台詞を思い出していた。

(彼女は「言わないで!」と言ったのだ。)
(それは結局見ない振りをしただけであって、許されたわけじゃないのだ。)
(彼女の中ではこの問題はまだ解決しては、いなかったのだ・・・!)

リディアが帰ってこないことでこうしてエッジの将来まで歪めてしまったのである。

「すまん、エッジ・・・!全ては、私のせいだ・・・!」
「え・・・ど、どういう意味だ・・・・・・ハッ!?」
「ままままさかっ、お前っ、」
「リディアとそーゆーーーカンケイだっって言うのかっ!?」
「いえ、違いますわ!その、もっと・・・根本的な所で・・・」

エッジに、改めてリディアとカインの関係を説明するポロム。
彼はリディアが孤児となった理由がカイン達にあったことを知らなかったので
ただ呆然と話を聞くだけである。
無言でカインを見詰めた後、
酔いを醒ますためかピシャピシャと自分の頬を叩き始めた。

「すまなかった、エッジ!私はこれから幻獣界へ行こうと思う・・・」
「私も同行いたしますわ。」
「待ちやがれ!俺様も、行くぜっ!!」
「王妃を迎えに行かなきゃナ!」
「エッジ・・・私を許してくれるか・・・」
「お前は十分、罪をつぐなったさ。 後は、リディア自身に決着つけさせようぜ。」
「俺様がそれを見届けてやるっ!」
「ありがとう、エッジ・・・」

こうして三人は『幻界』のドアから幻獣界へと旅立っていった。
カインは果たして罪を許されるのであろうか。

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