「カイン様、しばらくそちらを向いていてもらえますか?」
「?・・・うむ、わかった。」
カインが背中を向けると、後ろでなにやらゴソゴソと音が聞こえてくる。
なにをしてるんだろう、と思っているうちにポロムに肩を叩かれた。
振り返ると、そこにはパロムがいた。
いや正確には、パロムに変装したポロムがいた。
「パロ?・・・いやポロム、だよな?どうしたんだ、一体?」
「この国は女性禁制の地域がありますから今のうちに変装しておきましたの。」
「殿方の振りをしますので、よろしくお願いします。」
「む・・・わ、わかった。」
再び、エブラーナへ向けて歩き出す二人。
エブラーナの洞窟へ入るといきなり、『パブ王様』の看板が目に飛び込んできた。
『パブ王様』エブラーナ支店の前にはいかにも成金趣味のオヤヂ達が群がっている。
更にその周りを若者達が為す術なくただうろついていたりしているので
全く持って不健康な雰囲気である。
このパブは、目の玉が飛び出る程高額な会員証がないと入ることは許されない。
しかも入場の度にそれを購入しなければならないので、
若年層にそんな高額なチケットを手に入れることは到底不可能である。
呼び込みでたまに外へ出てくるバニーちゃんの姿を一目でも見ようと
こうして寒空の中出待ちしているのであろう。
「いきなり『パブ王様』に出迎えられるとはなぁ。」
「確かに若い女性が一人で歩ける場所ではないかもな。」
「ダムシアンが女性の夢の島なら、ここはさしずめ男性用夢の島、って所ですわ。」
「ここにもトロイアの女性達が出稼ぎにきてますのよ。」
(もしかして、トロイアが今一番お金持ちなんじゃないだろうか・・・)
「エッジがこれを作ったのかい?」
「ええ・・・彼、どっからかコルネオとかいう男を拾ってきたらしくて。」
「気が付けば、この国は一大ピン・・・なんて言えばいいのかしら・・・」
「うーん、修行明けの私には、ちょっと刺激が・・・」
などと言いながら、興味津々に洞窟を進む二人。
入り口付近は、それでも子供向けのおもちゃ(忍術)なども販売されていたが
地中深くなるにつれ、雰囲気はどんどん淫靡なものへと変わっていき
いつの間にか名前も「ウォールマーケット」になっていた。
客引きのお兄さん達を振り切りながら更に奥へ進むと
目的地の「蜜蜂の館」に到着した。
「エッジったら、今ではこの館の奥に住んでいるんですの。」
「蜜蜂の館は女性禁制だから会いに行く時は一苦労なんですよ。」
ブツブツ言いながらも、しっかりVIP会員証を提示するポロム。
何度かは遊びにきているらしい・・・
館の中は八角形の形になっており、それぞれに扉がついていた。
この8つの部屋から自分の遊びたい場所を選択するらしい。
- 『ムッキーの愛の混浴場』
- 『ゴールドソーサー』
- 『エーコの恋愛相談室』
- 『シャワー室』
- 『月の民の館』
- 『幻界』
- 『ブリッツスタジアム』
- 『総支配人室』
ドアの前には展望台で見かけるような小銭入れの機械がついていた。
10ギル入れると、部屋の中がのぞけるそうだ・・・!
カインは『月の民の館』が気になり、ちょっと覗いてみることにした。
鍵穴から部屋の中をのぞいてみると・・・
そこは月の民の館の奥にあったクリスタルルームらしい。
誰かの声が聞こえるのだが
十字キーで覗く方向を変えられることを知らないカインはただボーっと眺めていた。
『・・・シル、今回はどれぐらい滞在できるんだ?』
『大丈夫だよ兄さん、1年ぐらいって伝えてきたから。』
『そうか・・・じゃ、しばらくは一緒に過ごせるんだな。』
『兄さん・・・・・・(はぐはぐ)』
10ギルでは、ここまでしか見ることができなかった。
なんのことやらカインにはさっぱりわからないので、先に進むことにしよう。