FF4 ダムシアン編
直前の画面に戻るWritten by サエ

カインはダムシアン城が近づくにつれ、胸がキリキリ痛み出した。
ゴルベーザが赤い翼を率いてダムシアン城を爆撃したその時
操られていたとはいえ、
カインもその場に同行していたからだ。
ゴルベーザは火のクリスタルを手に入れるまで
無抵抗な人々に対しジェノサイドを繰り返していた。
カインの脳裏には、今でも
ギルバートを庇って爆風を受けた少女の姿が焼きついていたのである。
アンナを失ったギルバートはその時点で抜け殻にも等しい状態になり
朦朧と火のクリスタルをゴルベーザに差し出していたのだ。
あの壊滅的なダムシアンの城が復興するまでに、
一体どれ程の時間がかかったことだろう。
カインは自分の犯した罪の大きさに胸を締め付けられながら、
山を越えていった。

そこには、美しい城と穏やかな生活を送る人々がいた。
いや穏やかというよりは、活気に満ち溢れた様子で
町の人々は他のどの地域よりも裕福な感じさえ漂っている。
カインの驚いた様子を察知したポロムが解説してくれた。

ギルバートはトロイアと姉妹都市の関係を結び、
歌と踊りを武器にあっという間に商業国家として以前の姿を取り戻したそうだ。

「そうなのか・・・安心したよ・・・」

街中に差し掛かった頃、いきなり黄色い歓声が沸きあがった。
ちょうど中央広場にて、
眩い金髪の抜けるように白い肌を持つ美しい女性が竪琴を抱え、
両脇にダンサーを従えて登場するところであった。

「あ!!あの、中央にいるのがギルバート様ですわ!」
「!?女性ではないのか・・・・・・また、一層美しくなられて・・・」
「ギルバート様の演奏会が見られるなんてラッキーですわ!」
「他の都市では、お金をとられますからね。」
「うーん、抜け目ないなぁ・・・」
「公演会目当てで、ここに住む人もたくさんいらっしゃるんですよ。」
「ギルバート様のCD、写真集の売り上げだけでも凄い儲けになるとか。」

そうこうするうちに、ギルバートの歌が始まった。
甘く優しい歌声を聴くだけで、まるで桃源郷にでもいるような気分になれる。
広場に集まった人々は、ただもう、無心に歌声に耳を傾けるばかりである。
カインとポロムもしばし、ギルバートの歌声に酔いしれた。
その時、カインはギルバートと一瞬、眼があった。
ギルバートは、カインに向けて、一層優しく歌い始めた。
その歌声は、カインに祝福を与えてくれたのだった・・・

「ギルバートは、素晴らしい王になったのだな・・・」
「私は影ながら彼を応援することにしよう。」
「面会はされないのですか?」
「私はもうギルバートとは会話できたよ。」
「この歌を聴けただけで、私は十分だ。」

二人はダムシアン城をそっと後にしたのであった。

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