FF8 新一年生 .1
直前の画面に戻るWritten by サエ

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バタバタバタバタバタ・・・
教官は廊下を走り回っているサイファーの首根っこを押さえ
入学以来いくつめになるのかわからぬ注意カードを渡しながら反省を促した。

「オレ、走ってなかったですよ〜!」
「ただちょっと、今、とっても急いでるんです!」
「なにかあったんですか?」
「頼んでいた映画がやっと、視聴覚室に届いたんです!」
「それを早く見に行きたいんです!!」
「なるほど。でも廊下は走ってはいけませんよ、わかりましたね?」
「ハイ、教官!それじゃあ、失礼します!」

バタバタバタバタバタ・・・
サイファーは視聴覚室でも、思いっきり目立ちまくっていた。
お目当ての新作を借りに来たものの、漢字がまだ読めないので
どこの棚にあるのかわからないらしい。
大声でしんさくー!しんさくー!!と騒いでいる所為で
イヤホンを当てている生徒の耳にさえ届くほどだ。
見かねた銀髪の少女が、無言で新作の棚を指差してやる。

「お?お前、昨日オレのクラスに入ってきたヤツだよな?」
「なんだっけなぁ・・・えっとぉ、えっとぉ・・・。」
「そうだ、ふうじん、だ!!」
「お前の名前、カッコイイなぁって思って、覚えていたんだ。」

風神は自分の名前を褒められ、うれしそうに顔をほころばせる。
サイファーは風神のおかげでようやくお目当ての映画
「魔女とその騎士」をみつけ、小脇に抱えて受付へ向かった。
どうも彼はここでは顔馴染みの様であり、受付の対応も優しい。
昼休みは終了間際であり
もうすぐ5時間目の授業が始まる事をやんわり諭してくれる・・・。

「しまった・・・ぜぜん忘れてた。」
「はっはっはっ、この前もそんなこと言ってたな。」
「これは「借り出し中」の札を出しておいて上げるから、ちゃんと授業をうけてこい。」
「学園長直々に、魔女の講義をしてくれるって言ってただろ。」
「あああ!そうだった!!」
「それ絶対、他の人に貸さないでね、頼んだよ!」

バタバタバタバタバタ・・・
「そんなに走っちゃ・・・もう、聞いてないか。」
「おーい、風紀委員には、気をつけるんだぞぉ〜!」

元気良く駆け出したものの・・・
サイファーは自分の教室がどこにあるのか、
まだ良く理解していなかったようだ。
廊下をウロウロしていると
後から追いついてきた風神にまたもや目の前の教室を指差され
無事、5時間目の授業に間に合うことが出来た。
一緒に並んで着席するとその前に、
他の子供達よりも一回り以上大きい体躯の男の子が座る。
サイファーと風神が二人並んでいても、
その男の子の背中にすっぽり隠れてしまうほどだ。

「チェッ、邪魔だなぁ。おい、お〜い、おいってば!!」
「お前、でかすぎるよ!俺達の後ろに行けよ、全然見えないじゃないか。」
「おお、それはすまなかったんだもんよ!」

そう言って、
慌ててサイファー達の後ろへ席を移動する男の子。

「オイラ、らいじん、って言うんだもんよ!」
「これからよろしくだもんよ〜〜〜。」 ←(握手握手)

雷神は、二人の肩の間から顔をのぞかせ、延々と自己紹介を始めた。
彼が昨日入園してきたことやら村一番の昆虫採集名人だったことやら
山口県大相撲子供大会で4歳のときからの優勝連覇記録を持っているだとか
果ては腹が減っただのシヴァにはいつ会えるだの、
話の脈絡がつかめなくなってきた。
すると

五月蝿(い)!!

風神は、その小さい身体から、
よくこんな声が出るもんだと思うぐらいの大音量で
綺麗なソプラノボイスを教室中に響き渡らせていた。
思わず口をつぐむ、雷神。

「・・・はいはいはい。」
「雷神くん、お話は終わりましたか?」
「サイファーくん、風神さんも黒板の方を向いてくださいね。」

なんと、何時の間にやら授業は始まっていたらしい。
雷神ワールドに巻き込まれた二人は
授業そっちのけで、後ろ向きに座って彼の話に聞き入っていたのだ。
シド学園長はせっかくの講義に水をさされたことにおかんむりだ。

「・・・私のことを、こんなに小さい頃から無視するとはいい度胸ですね。」
「君達三人で、図書館から魔女の資料を持ってきてください。」
「(アセアセ)は、は〜い!!」

教室中の注目を集めていたことにようやく気付いた彼らは
照れ隠しで慌てて図書館へ向かったのだった。

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