FF8 運命の日
直前の画面に戻る2003/02/14 Written by サエ

(あー、きっと今年も駄目なんだろうなぁ・・・)

期待8割諦め2割の気持ちで彼は自分の下駄箱を開けた。
そこには、彼のいつもの見慣れた汚い上履きが一足はいっていた。

「・・・・・・」

淡い期待もあっさり裏切られ、力任せに下駄箱を荒々しく閉じるゼル。
凶器の拳を振り上げ、怒りの矛先を自分の下駄箱に向けたものの
校内物品破壊行為は重罪(便所掃除4年)なので
隣のサイファーの下駄箱を忌々しげに蹴っ飛すことで、溜飲を下げた。
んが、しかし!!
軽く蹴っただけのその下駄箱は、既に臨界点ギリギリだったようで
そのはずみで下駄箱の扉は弾かれた様に開き、中から
プレゼントのチョコレートが山のように飛び出してきたのだった!

「!!!ちっ、ちくしょーーー!!!」

自業自得とは言え、自分との差を見せ付けられ走り去るゼル。
そう。
今日は聖なるバレンタイン・デー!
そちらさんもどちらさんも皆一往にチョコレートがもらえるのではと期待する日。
サイファーは、番長風情に憧れる下級生から密かに人気があるらしい。
スコールも(一応は)委員長なので、それなりに。
でも、ゼルは、今年も・・・?

クソーーー、何故、俺だけ!?
そりゃサイファーもスコールも、バラムガーデン生粋の優秀な生徒さ!
でも、俺だって・・・俺なんて、今年入学したのに、
一発でSeeD試験に合格したんだぞ!!
あいつらなんて、
5歳からここにいてやっと合格したんじゃないか!
いや、サイファーなんて、万年候補生だっ!
俺のほうが、俺のほうが・・・・・・なのに、
何故俺だけ、

チョコレートがないんだ!

SeeDのよしみで、意味もなくブリッジに登ってみるゼル。
そこでは、今まさに
シュウとキスティスがニーダにチョコを渡す瞬間だった。
あっけらかんと渡すその様子から、それが義理チョコなのは明白。
ゼルがここに来たのも、「ついでにチョコを貰っちゃえ」作戦だったのか!?

「よっ、よおーーー!」
「!!!」
「あ、ごめん、私用事思い出したわ・・・」
「キスティ、私も手伝ってあげるわよ!」

まるでゼルを避けるかのように、慌しくブリッジから降りてしまう2人。
まさかニーダからチョコを奪うわけにもいかず、
しばし、カードバトルをしてお茶を濁すゼルなのであった。
動揺していてバトルに勝てるわけもなく、
肩を落としてスゴスゴと教室へ戻っていく。
そんなゼルの背中を見つめる、ニーダの哀れみの目が・・・痛い・・・・・・

(悪いな、ゼル・・・)
(俺たち、一応ZLAプロジェクトの一員だし・・・)
(今年で終わるはずなんだけどな。もうしばらくの辛抱だ!!)

そんなニーダの心の声が届くはずもなく。
焦りの気持ちを悟られないよう、
ゼルは深呼吸してから教室に入ると・・・そこには

春になった雷神がいた。

いや、まるで春を迎えたかのように嬉しそうに踊る雷神の姿があった。
嫌な予感がしたゼルは、
目を合わせないように席に着こうとしたが

「!!おー、ゼル!」
「どーーー、どーーーよっ!!」

今、一番見たくないものが、雷神の手に握り締められていた。

「へっへーーー、風神にもらったんだもんよ!」

嫌々雷神に目をやると、
特大サイズのハート型のチョコが握り締められている。
ただし、
そのハート型チョコには、まるで五寸釘で引っかいたかのように


『義理』

と刻み込まれていたが。
しかし、1個でも貰えたのだから羨ましいことに変わりはない。
なんでもないように、
うなずき返すのが精一杯のゼルなのであった(涙)。

授業開始のベルまであともう少し。
生徒達もボチボチ集まってきた頃・・・ゼルの後ろに立つ少女の姿が。
しかも、2人もいる!
はしゃぎながら手にしているのは、紛れもなくチョコレートだ!!
いよいよ、ゼルにも至福の時がやってくるのか・・・!?
その時、教室の扉が開かれた。

「や、これは失敬・・・・・・」
「職員室と間違えてしまったようだ。」

入ってきたのは、シーモア老師であった。
教室中の女生徒達全員、シーモア老師を一目みて
雷に打たれたかのようにシビれている!!(ふ、古っ)
次の瞬間、女生徒たちは
我先にとチョコレートを手に手にシーモア様に群がっていった。
本命・義理の見境なく、
シーモア様に貢がれていくチョコレートの数々・・・

シーモア様をバラムガーデンに呼び寄せたのは
イデア(の振りをした会長のブラックメール)だった。
彼がガーデンに到着した時点で、
「急用にて会えません」メールをいれたのだが
さりげなく、バレンタインデーの意味を伝えておいたのだ。
会長の思惑通り、
シーモア様はチョコレート狩りを始めてくれた。
ゼルにチョコを渡そうとしていた女の子はいなくなるに違いない、
という会長の狙いは見事に的中したのである。

さて、シーモア様は教室のチョコレートを全て回収すると
そのままガーデンを巡回し始めた。
至る所で、チョコレート攻めにあっている。
そのうち袂だけではチョコレートを持ちきれなくなり
髪の毛の中にまで収納しだした。
が、それでも結局間に合わず、
トワメルを呼び出して台車を押しながら廻り始めた。

いー加減、帰ってくれ!!

という男子生徒の悲痛な叫びを聞いたスコールが
なんとかシーモア様を追い返したそーな。
本日、バラムガーデンで本命チョコを受け取ることが出来た男性は
さぞかし少ないことだったろう。

肝心のゼルだが。
意気消沈で寮に戻ろうとしたところ、
三つ編みの少女からチョコレートを渡されているところを
クラブに目撃されている。
貰えないと思い込んで奈落の底に堕ちていたまさにその瞬間、
チョコを貰えたゼルは
三つ編みの少女を見る目つきが変わったと、
はっきり報告書に書かれていた。

「みんな・・・今まで、お世話をおかけしました。」
「本日にて、ZLAプロジェクトを終了と致します・・・(ポッ)

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後書き
シーモア様がFF8の面々と出会う小説があり、ブラックメール云々はその名残^^
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